
最近、コンビニやスーパーで「冷やし焼き芋」や「冷凍焼き芋」を見かける機会が増えたと思いませんか?
SNSでも話題のこの食べ方、ただのブームだと思っている方も多いのではないかと思います。
美味しいだけじゃない、このブームの裏には、実はすごい健康効果が隠されていることをご存知ですか?
その秘密の鍵を握るのが、今回ご紹介する「レジスタントスターチ」です。
これは、いつもの焼き芋を「冷やす」という一手間だけで生まれる、特別な成分。
まるで”第3の食物繊維”とも呼ばれるスーパーでんぷんなのです 。
「焼き芋は甘いから太りそう…」「炭水化物は控えめにしている」そんな風に思っている方にこそ、知っていただきたい新常識です。
この記事を読めば、なぜ冷凍焼き芋が体に良いのか、その科学的な理由から、最も効果的な作り方、食べ方、さらには気になる疑問まで、わかりやすく、そして詳しく解説していきますね。
「レジスタントスターチ」って何?
まずは、この記事の主役である「レジスタントスターチ」について、じっくりと見ていきましょう。
名前は少し難しそうですが、その働きは私たちの体にとって、とても嬉しいものなのです。
消化されない「奇跡のでんぷん」
「レジスタントスターチ(Resistant Starch)」とは、その名の通り「消化(digest)に抵抗(resist)するでんぷん(starch)」、日本語では「難消化性でんぷん」と呼ばれています 。
通常、ご飯やパン、いも類に含まれるでんぷんは、小腸で消化酵素によってブドウ糖に分解され、体内に吸収されてエネルギー源となります。
しかし、レジスタントスターチは、この消化酵素の働きを受け流し、分解されずに大腸まで届くというユニークな性質を持っています。
普通のデンプンが小腸でエネルギーに変わる「燃料」だとすれば、レジスタントスターチは腸の奥まで届く「特別な栄養カプセル」のようなもの、とイメージすると分かりやすいかもしれません。
この「消化されない」という特性が、食物繊維とよく似た働きをすることから、近年大きな注目を集めているのです。
食物繊維の「水溶性」と「不溶性」の"良いとこ取り"
レジスタントスターチは、機能的には食物繊維の一種として分類されます。
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」の2種類がありますが、レジスタントスターチは、なんとその両方の性質をあわせ持つ”ハイブリッド型”とも言える存在なのです 。
- 不溶性食物繊維のように:便のカサを増やし、腸を刺激して排便を促す。
- 水溶性食物繊維のように:腸内で善玉菌のエサとなり、発酵する。
この二つのいいとこ取りの性質が、レジスタントスターチの特徴です。
現代の日本人は、食生活の欧米化などの影響で食物繊維の摂取量が不足しがちです。
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で、成人女性は1日18g以上、成人男性は21g以上の食物繊維摂取を目標としていますが、実際の平均摂取量は15g前後と、目標に届いていないのが現状です。
そんな中で、さつまいものような主食級の食材から、自然に食物繊維の働きをする成分を補えるのは、とても嬉しいポイントと言えるでしょう。
(※食物繊維に関しましては『さつまいもの食物繊維を徹底解説!』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
腸内フローラを育む「プレバイオティクス」としての役割
レジスタントスターチの最大の功績は、大腸に到達した後に発揮されます。
大腸にたどり着いたレジスタントスターチは、ビフィズス菌などの腸内にすむ善玉菌にとって、最高のごちそう(プレバイオティクス)となるのです 。
善玉菌はレジスタントスターチを食べて発酵し、その過程で「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」という、私たちの健康に欠かせない物質を生み出します。
特に注目されているのが「酪酸(らくさん)」です 。
この短鎖脂肪酸には、以下のような素晴らしい働きがあります。
- 大腸の細胞のエネルギー源となり、腸のバリア機能を高める
- 腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える
- 全身の炎症を抑えたり、血糖値のコントロールを助けたりするホルモンの分泌を促す
つまり、レジスタントスターチを摂ることは、単にお通じを良くするだけでなく、腸内環境そのものを健やかに育て、体全体の健康をサポートすることに繋がるのです。
これはまさに、今話題の「腸活」の理想的な形と言えるでしょう。
なぜ冷やすと体に良い?焼き芋の中で起こる科学的な"変身"
では、なぜ温かい焼き芋を「冷やす」だけで、こんなにも体に良いレジスタントスターチが増えるのでしょうか。
その秘密は、さつまいものでんぷんが加熱と冷却によって”変身”することにあります。
加熱で「糊化(α化)」・冷却で「老化(β化)」
さつまいもに含まれるでんぷんの「変身」の過程を2つのステップで見ていきましょう。
【STEP1】糊化(α化)
生のさつまいもに含まれるでんぷん(βでんぷん)は、硬い結晶構造をしていて、そのままでは人間は消化できません。
しかし、水を加えて加熱すると、でんぷんの粒が水分を吸って膨らみ、結晶構造が壊れて、消化しやすいドロッとした糊(のり)状に変化します。
これを「糊化(こか)(α化)」と呼びます 。
ホクホクで甘い焼き芋が美味しいのは、このα化によってでんぷんが消化しやすい形に変わるからです 。
(※「糊化」に関しましては『さつまいもの甘さの秘密|「熟成」「糊化」「糖化」とは』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
【STEP2】老化(β化)
次に、α化したでんぷんを冷ましていくと、一度バラバラになったでんぷんの分子が、再び集まって規則正しく並び、硬い結晶構造に戻ろうとします。
この現象を「老化(β化)」または「再結晶化」と呼びます 。
ご飯が冷めると硬くなるのも、この老化が原因です。
そして、この「老化」によって生まれた、消化されにくい構造に”変身”したでんぷんこそが、レジスタントスターチの一種である「RS3(タイプ3)」なのです 。
冷蔵庫はレジスタントスターチの"製造工場"
この「老化」という現象は、いつでもどこでも起こるわけではありません。
最も効率よく進むための条件があります。
それは、水分量が30~60%の環境で、温度が0~5℃の時です。
この温度帯は、まさに家庭用冷蔵庫のチルド室や冷蔵室の温度そのものです。
つまり、焼き芋を冷蔵庫で冷やすという簡単な行為が、レジスタントスターチを増やすための、いわば『製造工程』になるのです。
実際に、炊きたてのご飯を24時間冷蔵庫で冷やすと、レジスタントスターチの量が約1.8倍に増加したという研究報告もあります。
さつまいもでも同様に、茹でた後に冷やすことでレジスタントスターチが増えることが分かっています 。
驚きの変化!血糖値の急上昇を抑えるGI値の劇的低下
レジスタントスターチが増えることによる最大のメリットの一つが、食後の血糖値の上昇を穏やかにする効果です。
その指標となるのが「GI値(グリセミック・インデックス)」です。
GI値とは、食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを測ったもので、この値が高い食品ほど食後の血糖値が急上昇しやすくなります。
そして、焼き芋は温かい状態と冷たい状態で、このGI値が劇的に変化するのです。
食品 | GI値(目安) | 分類 |
温かい焼き芋 | 約94 | 高GI食品 |
冷やし焼き芋 | 約55 | 低GI食品 |
この表が示す通り、温かい焼き芋はGI値が90を超える「高GI食品」ですが、冷やすだけでGI値が約55の「低GI食品」へと生まれ変わります。
これは、レジスタントスターチが消化されにくいため、糖の吸収がゆっくりになるからです 。
血糖値の急激な上昇は、インスリンというホルモンを過剰に分泌させ、脂肪を溜め込みやすくする原因となります。
冷やし焼き芋は、この血糖値の乱高下を防ぐことで、ダイエットや糖尿病リスクの管理、そして食後の眠気の防止にも繋がる、非常に賢い食べ方なのです。
ここで、一つの疑問が浮かぶかもしれません。
「焼き芋は加熱するとでんぷんが糖に変わって甘くなるのに、どうしてレジスタントスターチに変わるでんぷんが残っているの?」と。
実は、美味しい焼き芋を作るための「じっくり低温加熱」という工程が、この両立を可能にしています。
さつまいもが甘くなるのは、β-アミラーゼという酵素が、でんぷんを麦芽糖(マルトース)という糖に変えるためです。
この酵素が最も活発に働く温度が60~70℃前後。
オーブンなどでじっくり時間をかけて加熱することで、この「甘くなる温度帯」を長く通過させ、最大限の甘みを引き出すことができます。
しかし、この過程でも、すべてのでんぷんが糖に変わるわけではありません。
十分に加熱されてα化したものの、糖にはならなかったでんぷんがまだたくさん残っています。
そして、この残ったα化でんぷんが、その後の冷却工程で「老化」し、健康に良いレジスタントスターチへと見事に変身を遂げるのです。
つまり、「甘さを引き出すための加熱」が、「健康効果を高めるための冷却」の最高の準備段階になっているのです。
美味しさと健康、二つを同時に手に入れられる、まさに理想的なプロセスと言えるでしょう。
究極の冷凍焼き芋の作り方・食べ方
理論がわかったところで、いよいよ実践編です。
最高の美味しさと健康効果を両立させる「究極の冷凍焼き芋」の作り方を、4つのステップでご紹介します。
【STEP1】品種選び -「ねっとり系」が成功のカギ
まず大切なのが、さつまいもの品種選びです。
冷凍焼き芋を美味しく作るなら、水分量が多く糖度も高い「ねっとり系」の品種を選びましょう。
これらの品種は冷凍してもパサつきにくく、解凍後にはまるでアイスクリームのような、なめらかでクリーミーな食感を楽しめます 。
特におすすめの品種を下の表にまとめました。スーパーで選ぶ際の参考にしてください。
品種名 | 糖度(目安) | 食感 | 特徴 |
紅はるか | 非常に高い | ねっとり・しっとり | "はるか"に優れる甘さ。冷めても美味しい「冷やし焼き芋」ブームの火付け役。 |
シルクスイート | 高い | 絹のようになめらか | 貯蔵するとねっとり感が増す。上品な甘さが特徴。 |
安納芋 | 高い | クリーミー・ねっとり | 「蜜芋」の代名詞。元祖ねっとり系で濃厚な味わい。 |
紅あずま | 中程度 | ホクホク系 | 昔ながらの焼き芋。冷やすとパサつきやすい可能性も。 |
ホクホク系の品種(紅あずま、鳴門金時など)も美味しいですが、冷凍すると水分が抜けて少しパサついた食感になりやすい傾向があります。
初めて挑戦する方は、ぜひ「ねっとり系」から試してみてください。
【STEP2】焼き方 - 甘さを最大限に引き出す「低温じっくり加熱」
甘さを最大限に引き出し、レジスタントスターチの元となるα化でんぷんをしっかり作るための、おすすめの加熱方法を2つご紹介します。
王道!オーブンで焼く方法
これが最も美味しく、失敗なく作れる方法です。
- さつまいもをよく洗い、水気を拭き取ります。
- 天板にアルミホイルを敷き、その上にさつまいもを並べます。
- 160℃に予熱したオーブンで、60分~90分、じっくりと時間をかけて焼きます 。竹串がスッと通るくらい柔らかくなればOKです。
- (お好みで)最後に200℃に温度を上げて10分ほど焼くと、皮がパリッとして香ばしく仕上がります。
手軽!炊飯器で作る裏ワザ
オーブンがない方や、もっと手軽に作りたい方におすすめなのが炊飯器を使う方法です。
- さつまいもをよく洗い、炊飯釜に入れます。太いものは火が通りにくいので半分に切るのがおすすめです 。
- 水100~200ml程度を注ぎます 。
- 炊飯器の「玄米モード」で炊飯スイッチを押します 。玄米モードは通常の白米モードより時間をかけてじっくり加熱するため、低温加熱に近い状態を作り出せます。
- 炊きあがったら完成です。さらにねっとりさせたい場合は、もう一度玄米モードで炊飯する「二度炊き」もおすすめです 。
【STEP3】冷凍保存 - 美味しさと栄養を閉じ込める
美味しい焼き芋ができたら、いよいよ冷凍保存です。
正しい手順で、美味しさと栄養をしっかり閉じ込めましょう。
- しっかり冷ます:焼きあがった芋は、必ず常温で粗熱を完全に取り除きます。熱いまま冷凍すると、冷凍庫内の他の食品を傷めたり、霜が多くついて食感が悪くなる原因になります。
- 一本ずつラップで包む:粗熱が取れた焼き芋を、空気が入らないように一本ずつぴったりとラップで包みます。これにより、冷凍焼けや乾燥、酸化を防ぎます。
- 保存袋に入れて冷凍:ラップで包んだ芋を冷凍用の保存袋に入れ、できるだけ空気を抜いてから口を閉じて冷凍庫へ入れます。
- 保存期間の目安:この方法で約1ヶ月~3ヶ月は美味しく保存できます。家庭の冷凍庫は開閉が多く温度が変動しやすいため、なるべく早めに食べるのがおすすめです。
(※焼き芋の冷凍方法に関しましては『焼き芋を「上手に冷凍する方法」をわかりやすくご説明します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
【STEP4】美味しい食べ方 - 新感覚ヘルシースイーツを楽しもう
冷凍庫にストックした焼き芋は、食べ方も自由自在。
気分に合わせて楽しんでください。
<食べ方1>そのまま「焼き芋アイス」として
これが最も手軽で、新感覚の美味しさを楽しめる方法です。
- 冷凍庫から取り出し、常温で20~30分ほど置きます 。
- スプーンが少し入るくらいの硬さになったら食べごろ。まるで濃厚なジェラートやシャーベットのような、自然な甘さのひんやりスイーツになります 。
<食べ方2>「冷やし焼き芋」として
冷蔵庫で一晩かけてじっくり解凍すれば、しっとりねっとり感が増した「冷やし焼き芋」になります。
デザートとして、またはヨーグルトに添えても絶品です。
<食べ方3>食事への活用
冷凍焼き芋は、健康的な食生活の強い味方にもなります。
- 朝食に:忙しい朝、冷蔵庫から出してすぐに食べられるので、パンやご飯の代わりに。準備の手間いらずで栄養補給ができます。
- 間食に:午後3時のおやつに最適。甘いものが欲しくなる気持ちを満たしつつ、食物繊維とレジスタントスターチのおかげで腹持ちが良く、夕食のドカ食いを防いでくれます。
- セカンドミール効果を狙う:間食に冷やし焼き芋のような低GI食品を摂ると、その次の食事(セカンドミール)後の血糖値上昇まで穏やかにしてくれる「セカンドミール効果」が期待できます 。ダイエット中の方には特に嬉しい効果です。
(※冷凍焼き芋の解凍に関しましては『冷凍焼き芋の解凍方法|電子レンジ・オーブンなど器具別のコツと失敗対策』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
気になる疑問を完全解消!冷凍焼き芋Q&A
ここからは、皆さんが特に気になるであろう疑問について、Q&A形式で詳しくお答えしていきます。
【質問1】レジスタントスターチとは何ですか?
レジスタントスターチ(RS)は、「健康なヒトの小腸内で消化吸収されないでん粉およびでん粉分解物」と定義される難消化性でん粉です。
つまり、小腸内で消化吸収されずに大腸まで届くでんぷんおよびでんぷん分解物です。
食物繊維と同様に機能性成分として注目されており、適量を習慣的に摂取することで健康に寄与するとされています。
レジスタントスターチは、その性質から主に4種類、または5種類に分類されます。
- RS1: 細胞壁によって物理的に消化できないでん粉
- RS2: でん粉粒子自体に耐消化性があるでん粉
- RS3: 調理後に再結晶した老化でん粉
- RS4: 化学的修飾を施されたでん粉
- RS5: アミロースと脂肪の複合体でん粉
(参考:さつまいもの加熱調理直後、冷蔵保存及び再加熱によるレジスタントスターチ量の変化)
さつまいもの場合、生の状態で最も高いRS量(12.0%)を示しますが、この生のRSはRS2型であると考えられています。
加熱することで糊化が進み、消化性でんぷんに変化しやすい特徴があります。
加熱によって糊化したでんぷんは、冷却されると消化されにくい構造に戻ることがあり、これがRS3型となります。
この現象は、じゃがいもなどの他の芋類でも確認されており、調理後の冷蔵保存によってRS量が増加することが報告されています。
さつまいもでも、茹でたり蒸したりした後に冷蔵保存することでRS量が増加することが示されています。
まとめるとRS2型は「天然の抵抗性」、RS3型は「調理と冷却の過程で生成される抵抗性」と理解できます。
【質問2】レジスタントスターチのメリットは?
レジスタントスターチの主な健康上のメリットは以下の通りです。
- 血糖値抑制作用: 小腸での消化率が低いため、糖質や脂質代謝において血糖値の上昇を抑制する作用が挙げられます。
- 血液中コレステロールおよび中性脂肪の低下: 同様に小腸での消化率の低さから、血液中のコレステロールや中性脂肪の低下が見られます。
- 短鎖脂肪酸(特に酪酸)の産生: 大腸では腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸、特に酪酸を産生します。
- 腸内環境の改善: 酪酸が腸内細菌叢を変化させ、腸内の有用な菌を増殖させる効果が報告されています。
- がん細胞増殖抑制: 酪酸には、がん細胞の増殖を抑制する作用があるとの報告もあります。
(参考:かんしょの加熱調理法の違いによるレジスタントスターチ量の変化)
【質問3】生のサツマイモにはレジスタントスターチが含まれていますか?
生のサツマイモには、比較的高濃度のレジスタントスターチが含まれています。
ある研究では、生のサツマイモのレジスタントスターチ量は12.0%と報告されています。
この生の状態で存在するレジスタントスターチは、主にRS2と呼ばれる、でんぷん粒子自体に耐消化性があるタイプであると考えられています。
(参考:さつまいもの加熱調理におけるレジスタントスターチ量と食物繊維量との関係)
【質問4】調理方法によってレジスタントスターチの量は変わりますか?
サツマイモの調理方法はレジスタントスターチの量に大きく影響します。
一般的に、生の状態のでんぷんは消化されにくいですが、加熱調理によって糊化が進み、消化されやすいでんぷんに変化します。
したがって、加熱調理後のレジスタントスターチ量は生のサツマイモよりも有意に低くなります。
調理方法ごとのレジスタントスターチ量の変化については、以下の2つの研究で異なる結果が報告されています。
(研究1)ゆでる、蒸す、電子レンジ加熱の場合
この研究では、生のサツマイモと比べて、いずれの調理法でもRS量は有意に低い値となりました。
- 蒸し加熱: 調理されたサツマイモの中では最もRS量が高く、10.2%でした。
- ゆで加熱: RS量は8.8%でした。蒸し加熱と比較してRS量が低い結果となりました。
この理由として、ゆで加熱は蒸し加熱と比べて水分量が多く、調理時間も長く、温度上昇が緩やかであるため、サツマイモに内在するでん粉消化酵素の活性が長く持続し、糊化が進んでより消化されやすいでん粉に変化したと考えられています。
- 電子レンジ加熱: 調理されたサツマイモの中では最もRS量が低く、5.2%でした。
電子レンジ加熱は、マイクロ波によって食品内部が急激に発熱するため温度上昇が早く、調理時間が非常に短いにもかかわらず、難消化性でん粉を消化性でん粉に最も多く変化させた可能性が考えられています。
また、この調理法ではサツマイモの水分蒸発が最も多く見られました。
(参考:かんしょの加熱調理法の違いによるレジスタントスターチ量の変化)
(研究2)ゆでる、蒸す、焼き加熱の場合
別の研究では、生のサツマイモと比較して全ての調理法でRS量が低いという点は共通していますが、調理法間の順位は異なります。
- ゆで加熱: 加熱直後、冷蔵保存後、再加熱直後のいずれの場合も、調理されたサツマイモの中で最もRS量が高いという結果でした。
- 蒸し加熱: ゆで加熱に次いでRS量が高い結果となりました。
- 焼き加熱: 加熱直後、冷蔵保存後、再加熱直後のいずれの場合も、最もRS量が低いという結果でした。
この研究では、調理時の水分量が多いゆで加熱でRS量が高い結果となったことについて、いもの種類、加熱温度、時間、水分量などがRS生成にどのように関係しているかはまだ明らかではないと考察されており、サツマイモとじゃがいもでは異なる結果になる可能性も示唆されています。
このように、サツマイモのレジスタントスターチ量は、調理方法によって変化し、その変化の度合いは各調理法の加熱温度、時間、水分量などの条件によって異なることが示されています。
(参考:さつまいもの加熱調理直後、冷蔵保存及び再加熱によるレジスタントスターチ量の変化)
【質問5】再加熱はサツマイモのレジスタントスターチ量に影響を与えますか?
はい、サツマイモの調理後の保存方法や再加熱はRS量に影響を与えます。
一般的な傾向として、調理したサツマイモを冷蔵保存すると、でんぷんの老化(再結晶化)が進み、RS3と呼ばれるタイプのレジスタントスターチが生成されるため、RS量が増加する傾向にあります。
しかし、その変化は調理方法によって異なります。
- 茹で加熱: 加熱直後はRS量が低いですが、冷蔵保存後は高くなり、再加熱後もRS量は下がりませんでした。
- 蒸し加熱: 加熱直後はRS量が低いですが、冷蔵保存後は高くなったものの、再加熱後はRS量が下がりました。
- 焼き加熱: 冷蔵保存後にRS量が増加傾向にあったものの、加熱直後、冷蔵保存後、再加熱後のどの段階でも有意なRS量の変化は見られませんでした。
これらの結果から、冷蔵保存によるでんぷんの老化がRS量を増加させる可能性が示唆されますが、調理方法によって保存や再加熱によるRS量の生成・変化の仕方が異なることが明らかになりました。
老化によって生成されたRSは、単純な再加熱では消化性でんぷんに戻りにくいことも示されています。
(参考:さつまいもの加熱調理直後、
【質問6】冷凍と冷蔵、どちらがレジスタントスターチを増やすのに良いですか?
レジスタントスターチが生成される「老化」のプロセスは、加熱されたでんぷんが冷える過程で起こります。
そのため、冷蔵でも冷凍でも、レジスタントスターチは十分に増えます。
一部の研究では、ご飯の場合、急速に凍らせるよりも冷蔵庫でゆっくり冷やす方がレジスタントスターチの生成量が多くなる可能性が示唆されています。
しかし、実用面では大きな差はありません。
数日以内に食べる予定なら「冷蔵」、長期的にストックしておきたいなら「冷凍」と、ご自身のライフスタイルに合わせて使い分けるのが最も賢い方法です。
まとめ
ここまで、冷凍焼き芋とレジスタントスターチの秘密について、詳しく解説してきました。
最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- いつもの焼き芋を「冷やす」だけで、消化されにくい健康成分「レジスタントスターチ」が豊富に生まれる。
- レジスタントスターチは、腸内環境を整え、血糖値の上昇を穏やかにし(低GI)、満腹感を持続させることで、ダイエットや健康維持を力強くサポートする。
- 冷凍することで、まるで天然のアイスクリームのような美味しいスイーツとして楽しめ、長期保存も可能になる。
何か特別なサプリメントを用意したり、難しい調理法を覚えたりする必要はありません。
いつもの焼き芋を、ただ「冷やして」みるだけ。
そのほんの一手間が、あなたの腸と体を、未来の健康へと導いてくれる可能性を秘めています。
是非、試してみて下さい。