
現在、日本は第四次とも呼ばれる「焼き芋ブーム」の真っ只中にあります。
かつての素朴な間食というイメージから、健康的でおしゃれな「ごちそうスイーツ」へと、さつまいもはその地位を劇的に向上させました。
そして、その中心に君臨するのが、疑う余地のない絶対王者、「紅はるか」です。
本記事では、蜜のように濃厚な甘さと、とろけるような「ねっとり」とした食感は、まさにこの「さつまいものデザート化」という現代の潮流を捉えた「紅はるか」に関して、分かりやすくご説明したいと思います。
「紅はるか」とは
紅はるか(べにはるか)は、日本で育成されたサツマイモの新品種で、2007年に品種登録出願され(登録番号19255)、2010年に正式登録されました。
育成したのは独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)九州沖縄農業研究センターで、1996年に「九州121号」(外観良)と「春こがね」(皮色・食味良)を交配し、選抜・育成されたものです。
品種名の「はるか」は「既存品種よりはるかに優れる」ことに由来し、皮は赤紫色、肉色は黄白色で見た目の美しさが特徴です。
- 形状・外観: 芋は紡錘形で形が揃いやすく、皮の赤紫と中の淡黄色のコントラストが美しく、A品率(優品率)が高いと評価されています。粉質系(ホクホク系)品種のベニアズマなどに比べ、紅はるかはしっとり系で見た目も良好です。
- 利用用途: 紅はるかは焼き芋に特に適し、蒸し芋や天ぷら、お菓子加工、焼酎原料など幅広く利用できます。焼き芋にすると非常に甘く、後述のように麦芽糖由来の上品な甘さがあり、冷めても美味しいと評判です。
- 収量・栽培性: 標準栽培や早掘り栽培での収量は、当時の主力だった高系14号(※ベニアズマなどの元になった品種)と同等以上で、多収傾向にあります。ツルは中程度の長さでやや匍匐型、生育初期の萌芽性は中程度です。栽培適応力が高いため関東から九州まで広く普及し、2023年時点で全国のサツマイモ作付面積の約15%を占め、食用系ではシェア1位になっています。
- 病害虫抵抗性: 土壌害虫のサツマイモネコブセンチュウ抵抗性が強く、立枯病に中程度、黒斑病に中~やや弱と報告されています。従来品種の弱点だった病害抵抗性を強化した点も育成上のポイントでした。
- 貯蔵性: 貯蔵性は従来品種と同程度で、適切にキュアリング(掘り傷の癒合処理)した上で定温貯蔵すれば長期貯蔵に耐える品質です。ただし貯蔵中に糖化が進みやすいため、後述するように適切な管理で甘さをコントロールすることが重要です。また、生芋(生のイモ)は収穫直後より1~2か月熟成させた方が甘味が増して粘質化するため、10~11月に出荷される紅はるかは産地で一定期間貯蔵(熟成)させてから出荷するルール作りが提案されました。
「九州沖縄農業研究センター開発品種の紹介:糖度が高くておいしい食用サツマイモ新品種「べにはるか」を育成」
「紅はるか」の甘さの秘密
紅はるか最大の特徴は非常に高い糖度としっとりした食感にあります。
特に加熱後の糖度(Brix%)が他の品種より高く、甘みの質として麦芽糖(マルトース)の比率が高い点が科学的にも注目されています。
以下、紅はるかの甘さに関するデータや成分特徴を詳しく見てみましょう。
【甘さの秘密1】蒸し・焼き芋の糖度(Brix%)
農研機構の報告では、紅はるかの蒸しいもの糖度は高系14号より高いとされています。
実際、鹿児島県で行われた調査では、収穫後熟成した紅はるかを焼き芋にした際の糖度が20.9%超と、比較対象の安納紅(あんのうべに、17.8%)よりも大幅に高かったとの結果があります。(青果用サツマイモのBrixに関する調査)
一方、従来品種の紅さつま(高系14号系)は焼き芋糖度9%程度で、紅はるかの甘さが突出していることが分かります。
甘さの感じ方には食感も影響しますが、糖度20%を超えるサツマイモはまさに“天然のスイーツ”と言えるレベルです。
【甘さの秘密2】可溶性固形物・水分含有率
紅はるか生芋(生の塊根)の可溶性固形物(糖度)は、収穫直後で約10~12%前後です。
生の状態ではショ糖が糖組成の約90%を占め、グルコース・フルクトース(還元糖類)は各々数%以下と少ないことが報告されています。
水分含有率は生芋で約60~65%とサツマイモ平均的な値ですが、熟成中にデンプンが糖化して固形物率が高まる傾向があります。
【甘さの秘密3】熟成と糖組成の変化
紅はるかは貯蔵中のデンプン糖化が速い品種です。
収穫後1~2か月の定温熟成で芋内の酵素がデンプンをスクロース(ショ糖)に変え、甘味成分が増加します。
例えば千葉県の試験では、収穫7日後の紅はるか生芋の3糖(ショ糖+グルコース+フルクトース)総量は2.4g/100gFWでしたが、2か月後には4~6g/100gFW程度に増加し(貯蔵温度により差異)、特にスクロース含量が高温より低温貯蔵(11℃区)で顕著に増えました。(「サツマイモ「べにはるか」における収穫後約2か月以内の短期貯蔵時の 貯蔵温度が焼きいもの甘味及び肉質に及ぼす影響」)
一方で、熟成後の芋を加熱するとβ-アミラーゼ酵素の作用でマルトース(麦芽糖)が大量に生成されます。
農研機構の研究者は「紅はるかは従来品種に比べ貯蔵による糖化が早く進む」ため、高糖度でしっとりした焼き芋や干し芋になると報告しています。
実際、紅はるか加熱後の遊離糖組成はマルトースとスクロースが主役で、これらが強い甘さと上品な後味に寄与しています。
【甘さの秘密4】甘味の質(マルトースの役割)
紅はるかの甘さは麦芽糖由来の強い甘味が特徴です。
麦芽糖は砂糖(スクロース)より甘味度そのものは低いものの、口当たりがまろやかで後味がすっきりしています。
紅はるかを食べると感じる「濃厚なのに上品な甘さ」は、この麦芽糖比率の高さによるものと考えられます。
また紅はるかは冷めても甘さを強く感じる品種で、冷やし焼き芋などにしても美味しいことが確認されています。
【甘さの秘密5】粘度・食感
掘りたて直後の紅はるかはやや粉質寄りですが、熟成により粘質(ねっとり)化します。
加熱後の舌触りは滑らかで、喉に詰まる感じが少ないため、年配の方でも食べやすいとされています。
この食感の変化も、貯蔵中にデンプンが分解・ゼラチン化していくことと関係があり、熟成によって「しっとり蜜芋」になる典型的な品種です。
紅はるかはβ-アミラーゼ活性が高いため、加熱後にデンプンがどんどん糖に変わり粘度が上がることが示されており、従来のベニアズマ(ホクホク系)とは大きく異なる食味特性を示します。
以上のように、紅はるかは科学データから見ても糖度が非常に高く、しかも甘味の質が優れていることがわかります。
「焼き芋にすると甘い品種」として有名な安納芋(安納紅)と比べてもさらに高糖度になり得ることは驚きです。
農研機構も、紅はるかやクイックスイートなどの高糖度品種が登場したことで「甘いサツマイモ」の要因を科学的に解明する研究が進んだと述べています。
紅はるかの開発はまさにサツマイモの甘さへのブレイクスルーだったと言えるでしょう。
「紅はるか」の開発ストーリー
紅はるかが育成された2000年代前半、当時の主力品種「高系14号」(紅高系)の系譜(鳴門金時、ベニアズマ、ことぶき芋等)は栽培しやすく収量も安定していましたが、甘味がやや不足している点が課題でした。
特に初秋(早掘り~普通掘り時期)の新芋は甘さが乗りにくく、市場や生産者から「もっと糖度の高い美味しい品種が欲しい」という声が上がっていたのです。
また高系14号系はサツマイモネコブセンチュウや青枯れ(立枯病)に弱く、芋の形が乱れやすい(丸芋や曲がり芋が発生)という欠点もありました。
こうしたニーズに応えるため、農研機構の研究チームは「甘くておいしく、病害虫に強く、外観も優れた品種」を目標に掲げました。
そこで母本に芋形の整う系統「九州121号」、父本に皮色と食味の良い「春こがね」を選び、1996年に交配を実施しました。
交配後、生まれた多数の実生(種子由来の子孫)の中から何年にもわたり選抜試験を行い、目標特性を満たす系統を探しました。
最終的に選抜された「九州143号」と呼ばれる系統が、既存品種より外観・食味ともにはるかに優れることが確認され、2007年に品種登録申請されました。
品種名「べにはるか」はその旧系統名にちなみ、「遥かに優れた紅色の芋」という意味を込めて命名されています。
紅はるか開発には交配から品種登録まで約11年を要しました。
期間中には各地への予備配布や現地適応性試験も行われ、評価が高かったことで新品種化が期待されました。
食味の良さを客観評価するため糖度だけでなく食味官能試験も重ね、高い嗜好性が確認された点も品種化の決め手です。
また苗の増殖試験やウイルスフリー化(バイオ苗の利用)など、生産現場で普及させるための技術面にも注力しました。
病害抵抗性についても、高系14号の弱点だったネコブセンチュウ抵抗性を強にすることに成功し、主要産地で問題となっていた線虫被害軽減に寄与しています。
技術的ブレイクスルーとしては、紅はるかをはじめとする高糖度品種の登場により「低温貯蔵で甘味を引き出す」「β-アミラーゼ活性の高い品種で糖化を促進する」といった新たな栽培・調理法が注目されるようになった点が挙げられます。
紅はるかの普及の経緯
紅はるかはまず鹿児島県で奨励品種に採用され、その後大分県や千葉県などでも導入が進みました。
2010年以降、九州から関東まで急速に作付け面積を拡大し、農振水産省の資料「かんしょをめぐる状況について(令和7年5月)」によると、令和4年の概算では全国主要品種中1位(23.3%)となるまで普及しています。(農林水産省HP:「サツマイモの品種について教えてください。」)
普及初期には甘み不足のロットが問題視されることもありましたが、各産地で収穫後の熟成ルールを設けるなど品質安定に努めた結果、現在では消費者から高い信頼を得るブランド品種となりました。
「甘太くん」(大分)や「紅天使」(茨城)等のブランド戦略も普及を後押しし、焼き芋ブームとも相まって紅はるかは「蜜芋ブーム」の立役者となっています。
主な産地と地域ブランド【茨城・千葉・九州各地】
紅はるかは現在、日本各地のサツマイモ産地で主力品種となっています。
茨城県、千葉県など関東から、鹿児島県、宮崎県、熊本県など九州まで広範囲で栽培されており、それぞれの地域でオリジナルブランド化が進んでいます。
以下に主要産地ごとのブランド名や基準、特徴をまとめます。
【茨城県】「紅優甘」「行方かんしょ」「紅天使」
サツマイモ産出額全国1位の大産地で、紅はるかは県内作付の約40%近くを占める主力品種です(残りはベニアズマ等)。
茨城では2010年代から紅はるかのブランド化が積極的に行われ、例えばJAなめがたしおさいはオリジナルブランド「紅優甘(べにゆうか)」を展開しています。
紅優甘は品種が紅はるかで、掘り取り直後でもしっとりとした焼き芋になる高品質ロットのみを選抜して出荷するブランドで、水飴のようなネットリ食感と強い甘さが魅力とされています。
また、茨城県行方市などの産地で生産される紅はるか等は2023年に東日本初のGI(地理的表示保護)登録を達成し、「行方かんしょ」として認められました。
このGIでは貯蔵中の糖化を促す独自のキュアリング技術や品種リレー出荷体制による高品質維持が評価されています。
民間企業では、茨城県かすみがうら市の「ポテトかいつか」が販売するブランド「紅天使」が有名です。
紅天使は紅はるかを徹底熟成した焼き芋用ブランドで、焼き芋にすると糖度40度超とも言われる極甘の蜜芋として人気です。
このように茨城ではJAと企業双方でブランド化が進み、年間通じて甘い紅はるかを供給できる体制を整えています。
なお、土壌面では茨城県の鹿行南部~県央海岸部にかけて砂地土壌が広がり、水はけの良さと温暖な気候が糖度の高い芋作りに適しています。
【鹿児島県】「かのや紅はるか」「えい太くん」
鹿児島は全国有数のサツマイモ王国で、焼酎原料用「コガネセンガン」が最大品種ですが、紅はるかも近年大幅に作付けが増えています。
中でも鹿屋市(かのやし)は農研機構の試験地があった場所で、紅はるか発祥の地の一つです。
鹿屋市では独自の認証制度を設け、一定基準を満たした芋のみを「かのや紅はるか」というブランド名で出荷しています。
その基準には(1)土壌診断に基づく適正施肥、(2)ウイルスフリーのバイオ苗利用、(3)適期防除と栽培管理の徹底、(4)栽培記録の整備といった栽培面のルールに加え、130日程度の成熟期間確保、雨天収穫の回避、収穫後40日以上の貯蔵熟成、選果選別の徹底など収穫・貯蔵段階の取り決めもあります。
さらに鹿屋市では3年以上認証実績のある生産者に与える上位制度「かのや紅はるかプレミアム」も運用し、ブランド力向上に努めています。
こうした厳格な基準により、鹿屋産紅はるかは高品質・高甘度で知られ、市場からの引き合いも強い人気ブランド芋となっています。
鹿児島県内では他にも南九州市頴娃町(えいちょう)で「えい太くん」という紅はるかブランドが展開されており、こちらも甘さを最大限引き出した熟成紅はるかとして道の駅などで販売されています。
また鹿児島の土壌はシラス台地と呼ばれる火山灰土が多く、保水性と水はけを兼ね備えサツマイモ栽培に適しています。
南九州の温暖な気候も相まって、鹿児島産紅はるかは甘みと食感のバランスが良いとの評価があります。
【宮崎県】「葵はるか」
宮崎も九州有数の芋産地で、紅はるか普及に積極的な地域です。特に串間市(くしまし)にある「くしまアオイファーム」は、紅はるかを主力に据えた大型農業法人として知られています。
同社の直売ブランド「葵はるか」は、減農薬栽培(県基準50%以下の農薬使用)で育てた紅はるかを徹底管理の貯蔵庫で40日以上熟成し、糖度60度以上という驚異的な甘さまで高めて出荷するのが売りです。
1,500トン収容量の大型キュアリング貯蔵庫を持ち、年間を通じ質の高い紅はるかを供給可能とのことです。
葵はるかは商標上は独自ブランドですが、品種は紅はるかであり、その極甘・ねっとり品質から「幻の壺焼き芋」としてメディア紹介された実績もあります。
宮崎県全体でも紅はるかは青果用サツマイモの主力となっており、JA宮崎経済連などは産地リレー出荷で通年供給を図っています。
土壌は鹿児島に近い南部では火山灰土、平野部ではシルト質土壌が多く、いずれもサツマイモ栽培に適しています。
宮崎産紅はるかは糖度が上がりやすい傾向があるとされ、早掘りの9月出荷分でも十分甘い芋を育てる技術が研究されています。
【熊本県】「ほりだしくん」
熊本は九州第二の芋生産県で、焼酎原料用と青果用の両輪でサツマイモが盛んな地域です。
紅はるかも県北の菊池郡大津町や県南の八代地域などで栽培が増えており、JA菊池などから産直通販も行われています。
熊本産紅はるかはブランド名こそ特定の名称は少ないものの、「ほりだしくん」などJA独自の企画で早掘り芋を熟成させた商品化が試みられています(元々「ほりだしくん」はベニアズマ系ブランドですが、紅はるかにも転用)。
肥沃な火山性土壌と温暖少雨な気候を活かし、貯蔵せず即出荷でも甘い紅はるかを育てる工夫(例えば伏せ込み苗の改良や乾燥ぎみ栽培)が報告されています。
JA熊本経由の流通品では等級(秀品・優品)やサイズ表記が行われ、良品は首都圏市場でも「熊本県産紅はるか」として高評価を得ています。
今後、熊本独自の紅はるかブランド(例えば「火の国○○芋」のような名称)の展開も期待されます。
以上のように、紅はるかは主要産地ごとにブランド戦略が打ち出され、それぞれ糖度基準や熟成期間、栽培管理など独自の工夫で付加価値を高めています。
特に茨城・九州勢がブランド化で先行していますが、近年は他地域(新潟の「いもジェンヌ」や島根の「いわみ蜜衛門」など)も追随し、全国各地で「紅はるか◯◯」の名称を目にするようになりました。
産地 | 主なブランド名 | 糖度基準・熟成期間 | 選別基準 | 土壌・気候の特徴 | 一言魅力 |
---|---|---|---|---|---|
茨城県 | 紅優甘(JAなめがたしおさい)/紅天使(ポテトかいつか)/GI:行方かんしょ | 紅優甘:明確な糖度規定なし(高糖度ロット選抜)/紅天使:熟成約40日で糖度40度超も | 形状揃い・外観優先/熟成後出荷 | 鹿行・県央の砂地土壌、水はけ良く温暖 | 関東随一の干し芋・焼き芋供給基地 |
鹿児島県 | かのや紅はるか(鹿屋市認証)/えい太くん(頴娃町) | かのや:熟成40日以上、収穫後雨天回避/糖度基準は非公表 | 土壌診断・バイオ苗利用・形状選別 | シラス台地の火山灰土、水はけ良好 | 発祥地ブランド、厳格な品質基準 |
宮崎県 | 葵はるか(くしまアオイファーム) | 熟成40日以上、糖度60度以上(計測) | 減農薬栽培・熟成庫管理 | 火山灰土・シルト質土壌、温暖 | 極甘・ねっとり、冷やし焼き芋でも旨い |
熊本県 | (統一ブランド少なめ、例:ほりだしくん企画) | 熟成有無はブランドごと/糖度基準は未統一 | 秀・優・良の等級選別 | 火山性土壌、温暖少雨 | 即出荷でも甘さ十分、コスパ良 |
商品ラベルの読み方|品種名とブランド表示に注意
店頭や通販で紅はるかを購入する際、パッケージやラベル表示をよく確認すると、品種名・ブランド名・産地など様々な情報が読み取れます。
紅はるかに関して、消費者が特に知っておきたいポイントを挙げます。
【注意点1】品種名の表記
紅はるかは正式にはひらがなで「べにはるか」と書きますが、市場では漢字交じりで「紅はるか」と表示されることが多いです。
どちらも同じ品種を指しますので混同しないようにしましょう。
またラベル上は単に「さつまいも(紅はるか)」などと品種まで明記される場合と、品種名が書かれていない場合があります。
ブランド名だけが大きく表示されている時は、そのブランドが紅はるか種なのかどうかを確認することをおすすめします。
例えば「紅天使」「紅優甘」「甘太くん」といった名称は商標ブランドであり、それらの中身の品種はいずれも紅はるかです。
【注意点2】産地表示
サツマイモは生鮮食品のため、原則として産地(都道府県名)が表示されています。
紅はるかの場合、主要産地の名前(茨城県、鹿児島県など)が記載されますが、ブランドによっては地域名を冠していることもあります。
例えば「行方かんしょ紅優甘」であれば茨城県行方産、「かのや紅はるか」であれば鹿児島県鹿屋産です。
産地表示を見ることで、その芋が熟成芋なのか早掘り品なのか推測できる場合もあります(九州産は秋、関東産は晩秋~冬に出回ることが多いなど)。
【注意点3】等級・サイズ
出荷団体(JA等)によっては等級(秀・優・良)やサイズ(L/M/Sなど)がラベルに記載されています。
例えば「JA○○ 紅はるか 秀2L」なら、そのJAで定めた最上級ランクの大きめサイズの紅はるかであることがわかります。
等級は見た目の品質を示す目安ですが、糖度や味とは直接関係しないので、「優品でも十分甘い場合が多い」ことも覚えておきましょう。
サイズは料理用途に応じて選びます(焼き芋ならL~2L、家庭料理ならM以下など)。
【注意点4】熟成・糖度に関する表示
最近では「熟成○○日」「糖度○○度以上」などの表示を付けて販売する例も増えています。
これは販売者が任意で付けているもので、公的な基準はありません。
ただし、甘太くんなどでは糖度計で可溶性固形物が一定以上でないとそのブランド名を名乗れない規定があります。
糖度◯◯度という表示がある場合、一括表示ラベル(成分表示欄など)ではなく商品シールやPOPに記載されていることが多いです。
信用度は販売者次第ですが、糖度値が高いほど概ね甘い芋と考えて良いでしょう。
また「熟成◯◯日」と書かれていれば、収穫後その日数だけ貯蔵された芋であることを意味し、一般に熟成期間が長いほど甘み・ねっとり感が増すとされます。
ただしあまり長期になり過ぎると芽出しや品質劣化も起こるため、60日程度までが一般的です。
【注意点5】ブランドロゴ・マーク
商品パッケージには各ブランドのロゴマークやシンボルキャラクターが印刷されていることがあります。
例えば紅天使なら天使の輪とサツマイモのキャラクター、「かのや紅はるか」なら王冠を被った芋のイラスト(鹿屋市公認キャラ)が使われています。
こうしたロゴは品質保証の印でもありますので、購入時に目印として探すとよいでしょう。
またGIマーク(地理的表示認定マーク)も、行方かんしょ等では将来的に貼付される可能性があります。
ブランド・産地の公的なお墨付きがある商品は、価格はやや高めでも安定した美味しさが期待できます。
注意点のまとめ
紅はるか関連の商品ラベルを見る際のポイントをまとめると、「品種名(紅はるか)」を確認すること、そしてブランド名と産地名を読み解くことが大切です。
例えば「○○熟成芋」など品種を書かずに売られている場合でも、問い合わせれば紅はるかかどうか教えてもらえますし、ブランド名をインターネットで調べれば品種が判明する場合もあります。
紅はるかは前述の通り多数の別名ブランドがありますが、それらは皆同じ品種です。
ラベル表示を正しく読み取ってお気に入りの紅はるかブランドを見つければ、きっと期待を裏切らない美味しさに出会えるでしょう。
nshi)」といったブランド名で販売され、その価値を高めるための専用輸出箱まで開発されるほどです 。
ライバル品種と徹底比較!「紅はるか」はどこが違う?
さつまいもの世界は奥深く、多種多様な品種がそれぞれの魅力を競い合っています。
「紅はるか」の個性を真に理解するためには、主要なライバルたちとの比較が不可欠です 。
ここでは、人気品種それぞれの特徴をチャートで整理して解説します。
「紅はるか」「シルクスイート」「安納芋」の比較表
特徴 | 紅はるか | シルクスイート | 安納芋 |
---|---|---|---|
主な食感 | 非常にしっとり、粘質、クリーミー (ねっとり・しっとり) | 卓越したなめらかさ、絹のよう (なめらか) | 極めて粘質、とろけるよう (ねっとり) |
甘さの質 | 強烈、蜂蜜のよう、非常に強い | 上品、洗練されている、バランスが良い | 濃厚、深いコク、デザートのよう |
外観(皮の色) | 鮮やかな赤紫色 | 濃い赤紫色 | 褐紅色または淡黄褐色 |
外観(果肉の色) | 黄白色 | クリーム色 | 濃いオレンジ色 |
代表的な糖度 (Brix値) | 生:約30度以上、加熱後:50~60度以上 | 生:約8~9度、加熱後:約40度 | 生:約16度、加熱後:約40度 |
起源・開発元 | 農研機構 (国の研究機関) | カネコ種苗 (民間企業) | 種子島の在来種 (鹿児島県) |
登場・登録年 | 2010年 (品種登録) | 2012年頃 (販売開始) | 1998年 (品種登録) |
交配親 | 「九州121号」 × 「春こがね」 | 「春こがね」 × 「紅まさり」 | 在来種からの選抜 |
キーワード | 「はるかに優れる」 | 「絹」 | 「蜜芋」 |
各品種の特徴
それでは、人気のさつまいも品種の特徴を紅はるかの特徴と比較をしてみてみましょう。
「シルクスイート」の特徴
現代のねっとり系を代表する二大巨頭の対決です。
甘さの強さ、糖度の高さでは「紅はるか」に軍配が上がります。
しかし、「シルクスイート」の真骨頂はその名の通り「絹のようになめらかな舌触り」にあります。
繊維質が極めて少なく、驚くほどスムーズな口当たりが特徴です。
甘さの質も、「紅はるか」の濃厚な甘さに対し、「シルクスイート」はよりすっきりとして上品だと評されることもあります。
濃厚な甘さを求めるなら「紅はるか」、究極のなめらかさを求めるなら「シルクスイート」が選ばれるでしょう。
※シルクスイートに関しましては『「シルクスイート」の魅力を徹底解剖!』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。
「安納芋」の特徴
「ねっとり系」の先駆者である安納芋との比較です。
どちらも焼き芋にすると蜜が出るほど甘くなりますが、安納芋は水分量が非常に多く、食感はよりクリーミーでカスタードのようだと表現されます。
一方、「紅はるか」は、強いねっとり感の中に適度なしっとり感を残しており、甘さの絶対値では安納芋を上回ることもしばしばです。
※安納芋に関しましては『「安納芋」の魅力を徹底解剖!』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。
まとめ
「紅はるか」は、単なる美味しいさつまいもではありません。
それは、特定の市場のニーズに応えるために生み出され、緻密な栽培技術と丁寧な収穫後管理によってそのポテンシャルを最大限に引き出された、日本の農業科学の結晶です。
研究者のビジョンから始まり、世界的な食のトレンドへと成長したその物語は、「はるかに優れる」という名にふさわしい品質の証です。
今回ご紹介した知識をもって食べる紅はるかは、また一段と美味しくなると思います。
是非、美味しい紅はるかを堪能してください。