
「甘くて美味しい焼き芋が食べたい…でも、オーブンで1時間も待つのはちょっと…」。
忙しい毎日を送る中で、そう感じたことはありませんか?
本格的な石焼き芋の、あの蜜が溢れるような甘さとねっとりとした食感は格別ですが、その美味しさを手に入れるには時間と手間がかかるのが悩みの種でした。
もし、その本格的な味わいを、電子レンジでわずか5分温めるだけで楽しめるさつまいもがあるとしたら、どうでしょう?
そんな夢のような話を実現したのが、今回ご紹介する「クイックスイート」です。
このさつまいもは、まさに現代のライフスタイルのために生まれた革命的な品種。
その名前が示す通り、「素早く(Quick)」調理できて、驚くほど「甘い(Sweet)」のが最大の特徴です。
この記事では、クイックスイートがなぜ短時間で甘くなるのか、人気の「紅はるか」や「安納芋」とどう違うのか等、クイックスイートの魅力をわかりやすくご説明したいと思います。
クイックスイートとはどんな品種?
サツマイモ「クイックスイート」は農研機構(旧農水省試験場)が育成した比較的新しい品種です。
1993年に「紅あずま」を母とし「九州30号」を父として交配され、2002年に農林57号として命名登録、2005年に品種登録されました。
いもの形は紡錘形で皮は赤紫色、肉色は黄白色と、外見は従来品種(紅あずま等)とほとんど変わらない印象です。
しかし最大の特徴は、いもに含まれるデンプンの糊化開始温度が約50℃と低いことで、通常品種より約20℃低温でデンプンが糖化し甘みが出る点にあります。
この低温糊化性のおかげで短時間の加熱でも糖が作られ、「電子レンジで甘くなるサツマイモ」として注目されています。
クイックスイートの外観は従来品種(紅あずま等)とよく似ていますが、そのデンプン質には特別な特徴があります。
糊化温度が約50℃と低いため短時間で甘くなり、蒸しいもにした際の食味も紅あずまと同程度に良好です。
実際、電子レンジ調理でも味が劣りにくく、通常のサツマイモにありがちなパサつきや甘み不足が起こりにくいことが報告されています。
肉質はしっとりとなめらかで、加熱するとねっとり感とみずみずしさを併せ持つ食感になります。
冷めても固くなりにくく甘さが持続するため、お弁当やスイーツへの利用にも向くとされています。
収量も親である紅あずま並みに確保でき、さらに病害虫抵抗性にも優れるため青果用として総合力の高い品種です。
見た目の特徴
クイックスイートの見た目は、多くの人が「さつまいも」と聞いて思い浮かべる、優美で伝統的な姿をしています。
- 形状: きれいな紡錘形(ぼうすいけい)で、比較的形が整っています。
- 皮の色: やや濃いめの赤紫色で、見た目にも食欲をそそります。
- 肉の色: 加熱前は黄白色、蒸したり焼いたりすると淡い黄色になります。
- サイズ: やや大きめに育つ傾向があります。
外観の評価は「やや上」とされており、見た目の美しさも兼ね備えた品種です。
クイックスイートの開発の背景
クイックスイート誕生の裏には、研究現場での偶然の発見とそれを活かした発想があります。
育成担当者が品種候補のデンプン含有量を測定していた際、通常なら粉状になる乾燥デンプンが煎餅のように固まってしまう現象が確認されました。
最初は失敗かと思い3回もやり直しましたがすべて固化したため、「何か特別な性質があるのでは」と気づいたそうです。(『「クイックスイート」育成こぼれ話』)
この研究に関する、通常より低温で糊化する特異なデンプンであることが判明したという論文も出されています。(「サッマイモにおけるデンプン特性の変異に関する育種学的研究」)
もし異変を単なる失敗と片付けていたら見逃されていた可能性があり、地道な観察と探究心が実を結んだエピソードです。
しかし、当初その低温で糊化するデンプンを「何に活かせるのか?」は明確ではありませんでした。
食味が良く外観も美しい系統だったため品種候補として育成は続けられていたものの、決定打となる用途がなかったのです。
そこで生まれたのが「電子レンジでチンしても甘いサツマイモ」という着想でした。
忙しい現代でも手軽に甘いサツマイモを楽しめる品種になり得る、と期待が高まり品種化が決定します。
クイックスイートは「関東116号」という系統名で、静岡県と協力してブランド化を進める中でその特性にちなんだ現在の名称が新たに付けられました。
名前の通り「Quick(迅速に)Sweet(甘くなる)」性質を持つ品種として2005年に世に出たのです。
クイックスイートの公式プロフィール
クイックスイートは、優れた品種同士の掛け合わせによって生まれました。
- 地方番号(系統名):関東116号
- 登録番号: 農林水産省育成新品種「かんしょ農林57号」(2002年5月)
- 交配: 母「ベニアズマ」 × 父「九州30号」
- 命名の由来: その名の通り、「迅速な調理が可能な甘い品種」であることを分かりやすく示すために「クイックスイート」と名付けられました。
母親である「ベニアズマ」は、ホクホクとした食感と上品な甘さで東日本を中心に絶大な人気を誇る品種です。
その優れた食味を受け継ぎつつ、父親の「九州30号」から病害虫への抵抗性などの特性をプラスし、美味しさと育てやすさを両立させています。
主な産地と地域での取り組み・ブランド化
クイックスイートは静岡県や熊本県を主な産地として生産が始まりました。
特に静岡県では東部地域でブランド産品としての差別化に期待され、奨励品種に準ずる扱いで導入が進められました。
育成当初、静岡県東部で約40ヘクタールの普及見込みが立てられ、従来産地の市場競争力向上が期待された経緯があります。(『サツマイモ新品種「クイックスイート」』)
静岡の研究者や生産者は、外観と食味が良いこの品種にいち早く注目し、その「電子レンジでも美味しい」という特徴を活かしたブランド化に取り組みました。
実際、静岡県御前崎市では特産のクイックスイートを原料にした焼酎『海と風』を開発するなど、地域ブランドとしての活用事例もあります。
熊本県でも温暖で日照時間が長い気候を活かしクイックスイートの栽培が行われています。
現在ではそれ以外にも、さつまいも名産地の茨城県や鹿児島県、さらには千葉県や岩手県など全国各地の農家が試験的に生産を始めています。
ただしクイックスイートは非常に水分が多く鮮度管理が難しいため、生のままの長期流通には不向きです。
温度変化に敏感な低温糊化デンプンを持つことも影響し、収穫後の貯蔵性が低いため市場流通に乗りにくいとされています。
このため生産量自体がまだ限られており、大手スーパーなど店頭に並ぶ機会は少ない希少品種です。
主に産地直売所や生産者直販のオンラインショップで取り扱われることが多く、見つけたらすぐ購入しないと手に入りにくいほどです。
近年の“焼き芋ブーム”で知名度が上がりつつありますが、まだ流通量は少ないため、クイックスイートを手に入れる際は事前予約や通販の活用がおすすめです。
クイックスイートと他品種との違い
ここではクイックスイートを、近年人気の他のサツマイモ品種と比較してみます。
焼き芋ブームを牽引している紅はるか、しっとり食感で人気のシルクスイート、そして「蜜芋」と呼ばれる代表格の安納芋といった品種です。
それぞれ甘みの強さや食感、適した調理法に特徴があります。以下の比較表に主な違いをまとめました。
品種 | 特徴・開発背景 | 甘さ(糖度目安) | 食感 | 適した調理・用途 |
---|---|---|---|---|
クイックスイート(関東116号、2005年登録) | 農研機構育成。紅あずま×九州30号。でん粉の低温糊化性が特徴で、短時間加熱でも甘みが出る | 生の糖度:約16度 加熱後糖度:約38度(電子レンジ加熱で倍増) ※冷めても甘さ持続 | 水分多めでねっとり系。 しっとり滑らかで、冷めても硬くなりにくい | 電子レンジ調理◎(短時間で甘い焼き芋) 焼き芋・蒸し芋◎(甘み十分) スイーツ加工(ペースト等)にも適する |
紅はるか(九州農研 2010年登録) | 九州沖縄農研育成。「焼き芋ブームの主役」と称される高糖度品種。安納芋の系譜で蜜が多く濃厚な甘さが特徴 | 生の糖度:約30度 加熱後糖度:40度超とも(長時間焼成で極めて高い) | ねっとり系で非常にしっとり。 オレンジ色の蜜が多く、焼くと蜜芋状態に | 焼き芋◎(低温長時間加熱で真価発揮) 蒸し芋○(甘いが焼きほど風味は濃くない) スイーツ◎(スイートポテト等) |
シルクスイート(苗商共同開発 2012年頃) | 民間種苗会社等による育成。名前の通り絹のような滑らかさが特徴で、しっとり系(中間質)の食感と上品な甘さで人気 | 生の糖度:非公表(推定15度前後) 加熱後糖度:25~30度程度(紅はるかより控えめ) ※総糖量は中程度 | しっとり系(中間質)で滑らか。 ホクホク感もわずかに残る独特の食感 | 焼き芋◎(滑らかで甘い) 蒸し芋◎(パサつかず柔らか) スイーツ◎(和菓子・洋菓子どちらにも合う) |
安納芋(鹿児島・種子島原産 1980年代普及) | 鹿児島県種子島の在来系統から選抜。「安納紅」「安納こがね」などがあり、焼くと蜜が溢れる甘さで蜜芋ブームの先駆けとなった | 生の糖度:約16度 加熱後糖度:30~40度前後(長時間焼成で非常に高い) | ねっとり系の極致。 水分が多くクリームのように柔らかで、橙色の蜜が多量ににじむ | 焼き芋◎(低温でじっくり加熱すると絶品) 蒸し芋○(甘いが柔らか過ぎる場合も) スイーツ◎(芋ようかん、ペースト等) |
※糖度は文献や関係者の情報に基づく概算です(生の糖度は収穫直後/品種特性値、加熱後糖度は適切に加熱調理した際の最大値の目安)。クイックスイートの加熱後糖度「38度」は農研機構の紹介資料に基づく値です。紅はるか・安納芋も条件次第で糖度40度を超える蜜が出ることが報告されています。
上記のように、クイックスイートの甘さは紅はるかに次いで高く安納芋と同等程度とされています。
しかし紅はるかや安納芋がその甘さを引き出すのに長時間の加熱を要するのに対し、クイックスイートは短時間でも甘みを感じられる点が大きな違いです。
また電子レンジ調理のみでは紅はるかや安納芋は十分な甘さにならないのが一般的ですが、クイックスイートは電子レンジでも甘みが引き出せる点で際立ちます。
食感では、紅はるかや安納芋が極めてねっとりとして蜜が滴るのに対し、クイックスイートはしっとり滑らかで冷めても甘さが残るというメリットがあります。
シルクスイートは甘さこそ紅はるかほどではありませんが食感が滑らかで扱いやすく、比較的どんな料理にも向く万能型です。
一方、クイックスイートは「短時間で甘い焼き芋になる」という他品種にない利便性が最大の魅力と言えるでしょう。
短時間で甘くなる理由「低温糊化性でん粉」
なぜクイックスイートは短時間の加熱で甘くなるのでしょうか?
その鍵はデンプンの構造と酵素の働き方にあります。
サツマイモの甘み成分(麦芽糖など)は、いも内部のデンプンが加熱によって糖に分解されることで生まれます。
一般的なサツマイモでは、澱粉分解酵素が70~80℃の温度帯で最も活発に働くため、この温度域を長時間維持する「じっくり加熱」が甘さを引き出すコツになります。
石焼き芋やオーブンで時間をかけて焼くと甘くてホクホクになるのは、ゆっくり芯まで70℃前後に加熱し続けることでデンプンの糖化が進むからです。
逆に電子レンジ調理では短時間で高温に達しやすく、この甘くなる温度帯を十分に確保できないため、通常の品種では甘みが乗らず水分が飛んでパサついた仕上がりになりがちです。
ところがクイックスイートのデンプンは約50℃で糊化(α化)を開始し、通常より低い温度から糖に変わり始めます。
農研機構の分析によれば、クイックスイートのでん粉の糊化開始温度は37.4℃、ピーク温度42.9℃、終了温度54.4℃と測定されています。
一方、比較対象のコガネセンガンや紅あずまでは糊化開始が約59℃前後、終了温度は約78℃にもなります。
つまりクイックスイートは他品種より20℃近く低い温度域でデンプンがゼリー状に変化し、糖化反応が進行するのです。
50℃程度ですでに麦芽糖の生成が始まるため、急速加熱でも糖生成のチャンスを逃さず、短時間で甘さを引き出せます。
実際、蒸し器での加熱試験では紅あずまなどの約半分の蒸し時間で同等の糖度(Brix値)に達することが確認されています。
農研機構の資料には、クイックスイートでは蒸しいも加熱8分で糖度が大きく向上し、12分で糖度約8度(Brix)に達した一方、紅あずまでは同条件12分加熱でも糖度約4度に留まったというデータもあります。
このようにクイックスイートは短時間で効率よくデンプンが糖化するため、短い加熱時間で甘くなる品種なのです。
では、クイックスイートのデンプンはなぜ低温で糊化するのでしょうか?
その理由はデンプンの構成成分であるアミロペクチンの構造にあります。
クイックスイートのアミロペクチンは枝分かれした側鎖が短く数多く存在し、このためデンプン粒の結晶性が低いという特殊な構造を持ちます。
結晶性が低いデンプンほど低温で粘りを生じる(糊化する)傾向があり、クイックスイートのデンプンはまさに特殊なアミロペクチン構造によって低温糊化性を示すのです。
この性質のおかげで、電子レンジで急速に中心部まで加熱してもデンプンが十分に糖化し、甘みを感じる麦芽糖が生成されます。
研究報告でも、「クイックスイートはいもを電子レンジ加熱しても蒸しいもとの糖度差が小さく、甘味の低下がほとんど見られない」ことが確認されています。
一方、紅あずまや高系14号など通常品種では電子レンジ加熱により甘味が大きく低下し食味が落ちることが指摘されています。
この違いは、通常品種だと酵素が働く前に高温になり過ぎてしまうのに対し、クイックスイートは50℃付近の段階で糖化が始まるため短時間加熱でも甘さを引き出せることによるものです。
要するに、クイックスイートの「低温糊化性でん粉」こそが短時間調理で甘い理由の科学的根拠なのです。
「幻の芋」と呼ばれる理由
クイックスイートは非常に魅力的な品種ですが、スーパーなどで見かける機会はまだ少ないかもしれません。
一部では「幻の芋」と呼ばれることもあります。
その背景には、栽培の難しさがありました。
なぜクイックスイートは珍しいのか?
クイックスイートが広く普及していないのには、生産者側にとってのいくつかの課題があるからです。
- 栽培の難しさ: クイックスイートは栽培中にいもが割れてしまう「裂開」が起きやすい性質があります。
- 大きさの不揃い: 収穫されるいもの大きさが、1kg近い巨大なものから100gに満たない小さなものまで、バラバラになりやすい傾向があります 29。市場で販売する際には、ある程度大きさを揃える必要があるため、これは生産者にとって大きな課題となります。
これらの理由から、安定して栽培できる「紅はるか」などの品種に比べて作付け面積が限られており、結果として私たちの目に触れる機会が少なくなっているのです。
この事実は、クイックスイートという品種の興味深い二面性を浮き彫りにします。
消費者にとっては「利便性のために設計された」品種でありながら、生産者にとっては「栽培が難しい」品種なのです。
このギャップこそが、クイックスイートの希少性を生み出しています。
クイックスイートの主な産地
栽培の難しさにもかかわらず、クイックスイートの魅力に惹かれ、情熱を持って生産に取り組んでいる地域があります。
- 千葉県成田市: 「全国で唯一といってよい産地」と称されることもある、クイックスイート生産の先進地です。JA成田では、品種登録された平成14年(2002年)から試作を始め、平成17年(2005年)には本格的な生産を開始しました。生産者たちの努力により、栽培面積を徐々に増やしています。
- 岩手県滝沢市: 「さつまいもは南国の作物」という常識を覆したのが、岩手県滝沢市です。平成21年(2009年)から本格栽培をスタートさせ、岩手山麓の火山灰土壌という水はけの良い土地の利点を活かし、高品質な「北国のクイックスイート」を生み出しました。
その他、開発当初から普及が予定されていた静岡県や、高知県などでも栽培されています。
クイックスイートの入手方法
クイックスイートを探すには、以下のような場所をチェックしてみるのがおすすめです。
- オンラインストア: 楽天市場などの通販サイトでは、産地直送のクイックスイートが販売されていることがあります。
- 産地の直売所: 千葉県成田市や岩手県滝沢市などの産地に近い道の駅や農産物直売所では、新鮮なクイックスイートに出会える可能性が高いです。
- こだわりの八百屋・スーパー: 品揃えに力を入れている店舗では、希少な品種として取り扱っている場合があります。
よくある質問とその回答(Q&A)
Q1. クイックスイートは電子レンジ以外の調理でも美味しいですか?
A. はい、電子レンジ調理以外でも美味しく召し上がれます。
クイックスイートは基本的に焼き芋・ふかし芋など通常の調理法でも甘みが強く、しっとりねっとりとした食感が楽しめます。
特にオーブンや焼き芋器でじっくり加熱すると、蜜が染み出すほどの濃厚な甘さになります。
実際、電子レンジ加熱だけでなくアルミホイルに包んでオーブントースターで1時間ほど焼くと、糖がさらにキャラメル化して蜜があふれる極上の焼き芋が完成します。
つまり電子レンジでも十分甘く便利ですが、時間があるときは通常のサツマイモ同様に低温でじっくり焼くことでより一層甘みを引き出せます。
電子レンジ調理と比べてオーブン焼きの方が水分が飛びにくくしっとり仕上がるため、好みに応じて使い分けると良いでしょう。
Q2. クイックスイートを電子レンジで美味しく加熱するコツはありますか?
A. 美味しく仕上げるにはいもを丸ごと皮付きのままラップで包み、電子レンジ(500~600W)で約5~10分加熱する方法がおすすめです。
加熱時間は芋の大きさに応じて調整しますが、目安として中サイズの芋1本(200~300g程度)なら5分程度でほくほくになり、8~10分ほど加熱すればより甘みが強くねっとりとした食感になります。
加熱後はすぐにラップを開けず、そのまま2~3分蒸らすと余熱で中心までしっかり火が通り甘さが増します。電子レンジ調理でも十分甘い焼き芋になりますが、更に甘さとしっとり感を極めたい場合は、一度電子レンジで加熱した芋をアルミホイルで包み、オーブントースターなどで追加加熱すると良いでしょう。
こうすることで表面が軽く焦げて香ばしさと蜜感がアップし、一段と美味しくなります。クイックスイートは短時間で調理できる分、色々な方法で手軽に試せるのも利点です。
小腹が空いたときのおやつや忙しい日の時短レシピとしても重宝するでしょう。
Q3. クイックスイートがスーパーであまり見かけられないのはなぜですか?
A. クイックスイートは生芋のままでの流通が難しく、生産量も少ないため一般のスーパーではほとんど出回っていません。
先述の通り、この品種は水分が多く鮮度低下しやすい上、低温で甘みが出るデンプン特性ゆえに長期保存に不向きです。
収穫後に適切に貯蔵しないと傷みやすく、従来流通のような在庫管理がしにくいことがネックとなっています。
また生産農家自体もまだ限られており、地域も特定の県に偏っています。こうした理由から市場流通量が少なく、「幻の芋」と称されることもあるほどです。
入手したい場合は産地直売所や農家の通販サイト、ふるさと納税などを活用するのが現実的です。
例えば静岡県や茨城県、千葉県などでクイックスイートを栽培する農家が直販しているケースがあるので、インターネット検索等で探してみると良いでしょう。
希少品種だけに見つけたらラッキーですので、ぜひ一度その甘さを味わってみてください。
Q4. クイックスイートは収穫後すぐ食べられますか?保存した方が甘くなりますか?
A. クイックスイートは収穫直後から甘みを感じやすい品種ですが、基本的には他のサツマイモと同様しばらく貯蔵(熟成)するとさらに甘みが増すとされています。
サツマイモ全般に言えることですが、掘りたてより1~2ヶ月ほど15℃前後の温度で保管することで、デンプンが糖に変わり甘さが増す効果があります。
クイックスイートの場合、収穫時期は8月下旬~11月頃で、出荷のピークは10~11月(収穫後少し経ってから)です。
収穫直後でも比較的甘みがありますが、熟成させることでさらに糖度が高まり風味がまろやかになります。
ただし長期保存には向かない品種ですので、自宅で保管する際も湿度と温度管理に気をつけ、傷まないうちに消費するようにしましょう。
乾燥しないよう新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所に置き、1ヶ月以内程度で使い切るのがおすすめです。
甘みを最大限引き出すには、追熟させた後に前述のような低温じっくり加熱で焼き芋にするとよいでしょう。
Q5. クイックスイートの栄養価・カロリーはどのくらいですか?
A. クイックスイート自体の詳細な栄養成分データは公表されていませんが、一般的なサツマイモと同程度と考えられます。
サツマイモは炭水化物(でんぷん)を主成分としつつ、食物繊維やカリウム、ビタミンC・Eなども豊富に含む健康野菜です。
特にクイックスイートは甘みが強い分、可食部に含まれる糖質量も高めですが、その糖は麦芽糖が中心で緩やかに吸収されエネルギー源になります。
カロリーは安納芋など他の甘い品種に近く、100gあたり約140kcal前後と推定されます。
サツマイモはビタミンCや食物繊維を多く含み、ポリフェノールも含有するため、適量を食べれば美容や健康にも良い食材です。
クイックスイートもその例にもれず、甘いのに脂肪分が少なくヘルシーなおやつとして楽しめます。
ただし食べ過ぎれば糖質・カロリー過多になりますので、1日1本程度を目安に他の食事とのバランスを考えて取り入れてください。
Q6. クイックスイートに今後似たような品種は出てきますか?
A. クイックスイートは世界的にも珍しい低温糊化性のでん粉を持つ品種で、現時点(2025年)でも家庭用青果としては唯一と言える存在です。
後継として、農研機構はクイックスイートに匹敵する低温糊化性を持つ新品種の開発にも取り組んでいます。
例えば近年発表された「こなみずき」という品種は、でん粉加工用に育成されたもので、クイックスイート並みの低い糊化温度を持つ澱粉特性を示すと報告されています。
ただしこちらは主に工業的な澱粉用途を想定した品種で、青果用サツマイモとして普及するものではありません。
家庭で手軽に電子レンジ調理できるサツマイモ品種としては、現在のところクイックスイートが唯一無二の存在です。
今後、さらなる品種改良で同様の特徴を持つ甘いサツマイモが登場する可能性はありますが、クイックスイートほど成功し広く認知されたものはまだ出てきていません。
しばらくは「電子レンジで甘くなるサツマイモ」といえばクイックスイートが代名詞として親しまれていくでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
クイックスイートのとはどのような品種のさつまいもなのかをご理解いただけたのではないでしょうか。
低温糊化というユニークな性質によって短時間で甘いサツマイモを実現したクイックスイートは、忙しい現代人やスイーツ好きの強い味方です。
その専門的なバックボーンを知ると、一層ありがたみを感じながら味わえるのではないでしょうか。
もし運良く手に入った際には、ぜひ電子レンジ調理とじっくり焼き、両方の方法でその甘さの違いを試してみてください。
きっとクイックスイートの便利さと美味しさに驚き、サツマイモファンになること間違いありません。
クイックスイートはまだ希少な存在ですが、公式情報や研究論文に裏付けられた確かな特徴を持つ品種ですので、機会があればぜひ一度味わってみてください。
きっと「短時間でこんなに甘い!」と感動するはずです。
皆さんのサツマイモライフに新たな楽しみをもたらしてくれる存在として、クイックスイートをぜひ覚えておいてください。