
冬になると恋しくなるホクホクの焼き芋。
甘くて美味しい焼き芋ですが、「ビタミンC」というと一般には果物や生野菜をイメージし、「加熱するとビタミンCは壊れてしまうのでは?」と心配になる方もいるのではないでしょうか。
実は、焼き芋にはビタミンCがしっかり含まれており、加熱後も多くが残ることが知られています。
本記事では、焼き芋のビタミンC含有量や加熱調理との関係、ビタミンCの働き、そして効率的に焼き芋でビタミンCを摂るコツまで、分かりやさしく解説したいと思います。
焼き芋にもビタミンCは含まれている?どれくらい豊富なのか
結論から言えば、焼き芋(サツマイモ)にはビタミンCが豊富に含まれています。
サツマイモは芋類ですが、その100g中のビタミンC含有量は柑橘類にも匹敵するといわれますs。
実際、文部科学省の「日本食品標準成分表」によれば、生のサツマイモ100g中にビタミンCが約29mg含まれています。
そして焼き芋に調理した後でも100g中約23mgものビタミンCが残っています。
これは同量のレモン果汁に含まれるビタミンC(約50mg)の半分ほどに相当し、みかんなら100g中のビタミンCは30mg前後ですから、焼き芋のビタミンC含有量は決して侮れません。
以下の表に、サツマイモ(焼く前後)と柑橘類のビタミンC含有量をまとめました(全て可食部100gあたりの量)。
食品(100gあたり) | ビタミンC含有量 |
---|---|
サツマイモ(生) | 約29mg |
サツマイモ(焼き芋) | 約23mg |
温州みかん(生) | 約32mg |
レモン果汁 | 約50mg |
※サツマイモの値は皮なしの場合。みかん1個(可食部100g弱)で約30mg前後のビタミンCを含みます。
ご覧のように、焼き芋100g(小さめの焼き芋半分~2/3程度)で約20mg以上のビタミンCを摂取できます。
これは大人の1日必要量100mgの約1/5~1/4に相当し、例えば標準的な大きさの焼き芋1本(約200g)なら1日分の約50%ものビタミンCが補える計算です。
冬場に暖かい焼き芋を食べながら、同時にビタミンC補給ができるのは嬉しいポイントですね。
レモンのビタミンC
今回調べていて分かりにくかったのがレモンに含まれるビタミンCです。結論から言うとレモン果実1個には100mg以上のビタミンCが含まれるのですが、日本食品標準成分表ではレモン果汁分(全果に対する果汁分30%)として50mgとされています。
またジュースなどの「レモン〇個分のビタミンC」のように飲料に使われるビタミンCの表記は「120g(レモン1個重量) × 30%(果汁分) × 50mg(V.C) / 100g(果汁) ≒ 20mg」という根拠でレモン1個分のビタミンCを20mgとしていました。(参照:全国清涼飲料連合会『「レモン果実1個当たりのビタミンC量」表示ガイドライン』)
この記事では、日本食品標準成分表のレモン果汁の数値を参考にしました。
ビタミンCは熱に弱い?焼き芋でビタミンCが残る理由

一般にビタミンCは熱に弱く、水に溶けやすい栄養素として知られています。
野菜を茹でるとビタミンCが茹で汁に流出して大幅に減少してしまい、例えばブロッコリーでは茹で調理後にビタミンCが生より著しく減るデータが報告されています。
そのため「加熱するとビタミンCは壊れる」とよく言われますが、焼き芋の場合は加熱してもビタミンCの損失が少ないことが特徴です。
では、なぜ焼き芋ではビタミンCが残りやすいのでしょうか?主な理由として、以下の点が挙げられます。
水にさらさず加熱するため流出しない
焼き芋はサツマイモを直接火で焼くか石焼きなどで加熱する調理法です。
水を使わない調理のため、ビタミンCが茹で汁に溶け出す心配がありません。
ビタミンCを多く残したい場合、水を使わずに加熱するか、茹でる場合も手早く短時間で済ませることが大事だとされています。
焼き芋はまさに水を使わない理想的な調理法なのです。
でんぷんによる保護効果
サツマイモのビタミンCは細胞内のデンプンに包まれているため熱から守られ、加熱による分解を受けにくいとも言われます。
実際、サツマイモでは電子レンジ加熱や蒸し芋にしても他の野菜よりビタミンC残存率が高いという報告があります。
この「でんぷんがビタミンCを守る」という通説は近年見直す動きもありますが、少なくともサツマイモの組織内でビタミンCが急激に分解されにくい環境が整っているのは確かです。
(参照「サツマイモの栄養機能成分と焼き芋の美味しい焼き方理論」)
加熱そのものによる分解が緩やか
ビタミンCは確かに高温に長時間さらされると分解しますが、その減少には思った以上に時間がかかることが分かっています。
ある検証では2時間程度の加熱ではビタミンCはほとんど減らなかったとの報告もあり、「ビタミンCは実際にはそれほど熱に弱くない」という指摘もあります。
焼き芋の場合、じっくり時間をかけて加熱してもなお半分以上のビタミンCが残存していたというデータもあり、かなり長時間加熱してもサツマイモのビタミンCは一定量残ると考えられます。
酵素の働きが抑えられる
生の野菜や果物にはビタミンCを酸化させてしまう酵素(ビタミンCオキシダーゼ)が含まれます。
しかしサツマイモの場合、この酵素は約60℃で不活性化するため、加熱によるビタミンC酸化が進みにくいとも言われます。
加熱前半で酵素が失活すれば、その後高温にしてもビタミンCの酸化分解が起こりにくくなるわけです。
この点もサツマイモのビタミンC保持に寄与している可能性があります。
以上のように、焼き芋はビタミンCを効率良く摂取できる調理法なのです。
「ビタミンC=生で摂るもの」と思われがちですが、焼き芋であれば寒い季節に温かいままおいしく食べてビタミンCを取り入れられるのが嬉しいですね。
★ポイント
ビタミンCを逃さず摂る調理のコツは「水に長くさらさない」ことです。
焼き芋以外でも、野菜はゆでずに蒸す・焼く、または煮汁ごと食べられるスープにするなど工夫するとビタミンCの損失を抑えられます。
どうしても茹でる場合も、皮付きのまま茹でたり、下ゆでせずに料理に加えるなどしてみましょう。(※焼き芋以外のアク抜きに関しましては『さつまいもを水にさらすのはなぜ?』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
ビタミンCの主な働き・期待できる効果
ビタミンC(アスコルビン酸)は体の様々な機能維持に欠かせない水溶性ビタミンです。
焼き芋などからビタミンCを摂取すると、次のような健康効果が期待できます。
- 風邪予防・免疫力アップ: ビタミンCは免疫細胞の働きを高め、ウイルスや細菌への抵抗力を強化します。十分なビタミンC摂取は風邪の予防や症状緩和に効果的だとされています。寒い時期に焼き芋でビタミンCを補給すれば、風邪予防に一役買ってくれるでしょう。
- 美肌効果(コラーゲン生成・抗酸化): ビタミンCはコラーゲン合成に必須の栄養素で、肌や血管を健やかに保つのを助けます。また強い抗酸化作用によって肌の老化を促す活性酸素を除去し、シミ・ソバカスの原因となるメラニン生成を抑制する働きもあります。このためビタミンCは美肌ビタミンとも呼ばれ、十分に摂ることでハリのある若々しい肌づくりに役立ちます。
- 老化防止・生活習慣病予防: 抗酸化作用により、ビタミンCは体内で細胞が酸化・ダメージを受けるのを防ぎます。その結果、老化現象の抑制や動脈硬化など生活習慣病リスク低減にもつながると期待されています。ビタミンCはビタミンEなど他の抗酸化物質とも協力して働き、身体をサビから守る重要な栄養素です。
- 鉄分の吸収を助ける: ビタミンCは食事中の鉄の吸収を高める効果もあります。特にホウレン草など植物性食品に含まれる非ヘム鉄は吸収率が低いのですが、ビタミンCを一緒に摂ると吸収が促進されます。焼き芋を食物繊維源としてだけでなく、ほかの食材と組み合わせて食べれば鉄分補給にも役立つでしょう。
このように、ビタミンCは健康と美容に多彩なメリットをもたらします。
人間は体内でビタミンCを作ることができないため、毎日コツコツ食品から摂取する必要があります。
焼き芋は美味しく食べながらビタミンCを取り入れられる優秀な食品と言えますね。
(参照:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』eJIM ビタミンC)
焼き芋で効率よくビタミンCを摂るためのコツ
焼き芋はビタミンCの供給源として優れていますが、さらに上手に活用するためのポイントを押さえておきましょう。
皮ごと食べる
焼き芋は皮の直下にも栄養素が豊富に含まれているため、できれば皮ごと食べるのがおすすめです。
サツマイモの皮にはヤラピンという成分やポリフェノールも含まれていますが、ビタミンCも皮近くの方がやや多いとの報告もあります。
皮に抵抗がなければ丸ごとかぶりついて栄養を余すところなく摂りましょう。
調理後は早めに食べる
焼き芋にしたビタミンCは比較的安定していますが、調理後長時間放置すると徐々に減少する可能性があります。
特にカットした状態で空気に触れると酸化が進みやすくなるため、焼き上がったら保温しつつ早めに食べるのが理想です。
冷やし焼き芋も美味しいですが、冷蔵庫で保存する際はしっかりラップして乾燥や酸化を防ぎましょう。
他のビタミンC豊富な食品も組み合わせる
焼き芋だけでも十分ビタミンCを摂れますが、果物や他の野菜も合わせて食べるとさらに効果的です。
例えば焼き芋をデザートにみかんやキウイフルーツを添えたり、サツマイモ入りのサラダにパプリカやブロッコリーを加えると、ビタミンCが一層充実したメニューになります。
複数の食品から摂ることで他の栄養素もバランス良く補給できます。
表: ビタミンCが豊富な食品比較(可食部100gあたり)
食品名 | 状態 | ビタミンC含有量 |
赤ピーマン | 生 | 170 mg |
キウイフルーツ | 黄肉種・生 | 140 mg |
ブロッコリー | 生 | 140 mg |
レモン | 全果・生 | 100 mg |
青ピーマン | 生 | 76 mg |
いちご | 生 | 62 mg |
レモン | 果汁 | 50 mg |
焼き芋 | 焼き | 23 mg |
この表だけを見ると、「焼き芋のビタミンCは、赤ピーマンやキウイフルーツに比べると少ない」と感じるかもしれません。
しかし、ここで重要になるのが「現実的な摂取量(ポーションサイズ)」という視点です。
例えば、ビタミンCが豊富な赤ピーマンですが、一度の食事で生で100g(大きめのものを約1個)食べるのはなかなか大変です。
一方で、焼き芋は1本で200g以上あり、美味しく、満腹感も得られるため、無理なく食べきることができます。
このように焼き芋とビタミンCが豊富な野菜や果物と組み合わせて食べることで、無理なくビタミンCを摂取することができます。
毎日の食卓に取り入れる
ビタミンCは体内に蓄えておける量に限りがあり、余分な分は排泄されてしまいます。
そのため、一度にまとめて大量に食べるよりも毎日の食事に分けて取り入れることが大切です。
焼き芋は腹持ちも良く間食にも適しているので、1日1/2本~1本程度を目安に継続して食べると良いでしょう。
なお、焼き芋には今回取り上げたビタミンC以外にも食物繊維やカリウム、ビタミンEなど健康に役立つ栄養素が豊富です。
(※食物繊維に関しましては『さつまいもの食物繊維を徹底解説!水溶性・不溶性のバランスと腸活効果』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
まとめ
焼き芋のビタミンCについてまとめます。
- 焼き芋(サツマイモ)にはビタミンCが豊富に含まれ、加熱後も大半が残存します。100g中に約20~23mg程度のビタミンCが含まれ、1本食べれば1日の必要量の20~50%を補給できます。冬に暖かい焼き芋を食べてビタミンCを摂取できるのは大きなメリットです。
- 焼き芋でビタミンCが壊れにくいのは、調理法とサツマイモの特性によるものです。水を使わず加熱するため流出による損失が少なく、サツマイモのデンプンや酵素の性質により熱による分解も緩やかです。その結果、他の食品よりビタミンCの残存率が高くなっています。
- ビタミンCは免疫機能の維持や美肌づくりに欠かせない栄養素です。抗酸化作用による老化防止や風邪予防、コラーゲン生成の促進など様々な効果がありますshoku-do.jp。不足すると疲れやすくなったり肌トラブルの原因にもなるため、日頃から意識して摂りたいビタミンです。
- 焼き芋はビタミンCを美味しく摂取できる優秀なおやつ・食材です。お腹にたまりやすく間食にも適しており、食物繊維も摂れるため一石二鳥です。皮ごと食べる、出来立てを早めに食べるなど工夫しつつ、ぜひ日々の食生活に取り入れてみましょう。
ビタミンCは身体に蓄積できないため毎日の継続摂取が大切です。
焼き芋を上手に活用して、美味しく楽しくビタミンCを補給し、健康管理や美容に役立ててください。
温かい焼き芋でホッと一息つきながら、体も元気にしていきましょう。